▼ 実装パーツの入れ替え |
パーツの入れ替えは、ただ闇雲に高価な物にすれば良いというワケではない。
改造目的や演奏する楽曲の方向性など、それらに合わせてベストチョイスする必要がある。
また、欠点を埋めて長所を伸ばすなど、その楽器自体の特性もしっかり把握しておくべきであろう。
ではまず、GrassRoots のフォレストの現状を見極めることから始めます。
ESP 社ラインナップの中では一般的に初心者向けの位置づけがされているせいか、
上位モデルとの比較も含めて酷評が多いのが正直なところだろう。(苦笑)
ただし、酷評と言っても実際に使ったこともなさそうな人の意見や、ショップで試奏した程度の意見だと
思えるようなものも多く、ほとんどが見た目や雰囲気だけで判断されたような話しが多い感じだ。
まあ、インパクトが強いモデルなだけに好きな人も多いが、極端に嫌う人も多いから仕方ないか。(笑)
…とは言え、見た目も大事な要素なので、このような意見も正面から向かい合って徹底的に解消して
やりたいと思う。
それらの意見の中でよく言われている欠点としては 「 鳴りの悪さ 」 だ。
これは楽器自体がもつ 「 響きの良さ 」 とか、 「 音の豊かさ 」 、「 味のある音 」 が乏しいと言うこと。
確かにフォレスト ( 特に GT 系ボディー ) は、スリムなボディーシェイプで全体的に薄く重量も軽いために
しっかりとした響きから縁遠く見える。それに加えてボルトオン形式ネックだとサスティーン性能も期待薄。
さらに弦から直接振動を伝えるブリッジも安価なものが付いているから音の乗りが弱く厚みに欠けそうだ。
まさにツッコミ所が満載(笑)
しかし、ツッコミ所が明確なおかげで、それを解消・緩和する手立ても考えやすい。
エレキギターという楽器は、いろいろなパーツが集まって出来ている。
だから、それらの構成パーツを入れ替えることにより、欠点を埋めることが可能になるのだ。
以上を踏まえ、各部のパーツを以下のようにチョイスしてみた。
■ ブリッジ
フォレストの場合、普通はフロイドローズタイプのブリッジ + ロックナットか、ストップテールピースに
ロック無しの普通のナットの組合せのどちらかだが、今回私がいじり倒し用に入手したフォレストは
シンクロタイプのブリッジに普通のナットで、あまり見かけないモデルだ。
普通の GrassRoots フォレストに付いているフロイドローズは、いわゆるライセンス品で本物ではない。
まあ、クルマの世界的に言えば、ブレンボに対するスミンボ ( 住友がライセンス製造したブレンボ )
のような感じだろうか。
シンクロをやめて本物のフロイドローズ移植という選択肢もあるかも知れないが、さすがに取り付けの
部分が合わないし、ボディーを加工してまで付けても本来の目的の鳴りの改善から遠のいてしまう気が
するので、このままシンクロタイプで入れ替えることに決めた。
というワケで、ブロックと言えば ↓ このメーカー品が私的に大好きだ。
高精度で有名な日本の誇る GOTOH ( ゴトー ) 製、シンクロタイプのトレモロブリッジ。
これは、スチールブロックのTS系。音色の良さと響きの良さなら断然スチールブロックに限る。
一般的に、普通の鋳物ブロックからスチールブロックへの変更で音色はガラリと変わると言う。
弦を直接支える部分なだけに、ボディーよりも 「 鳴り性能 」 が顕著に出るのだろう。
マニアックな言い方をすれば 「 スチールブロック独特な鳴り 」 が存在するのだ。
それと、アーミングするなら断然フロイドローズ等のロック式トレモロブリッジが有利だと思われるが、
アーミングしないことを前提とするならば、シンプルな構造のシンクロタイプのほうが鳴りが良いと思う。
ここはスプリングハンガーをキッチリと締め上げて、弦の振動を確実にボディーに伝えてやる。
スチールブロックの味のある響きと共に、これでサスティーン性能も向上だ。
↑ もともと付いていた鋳物ブロックのブリッジと、GOTOH 製スチールブロックブリッジの重さを比べる。
やはりスチールブロックのほうが重い。この重さの違い、材質の違いが確実に音色を変えるだろう。
■ ペグ
ブリッジを変えたら当然ペグも交換だ。
どんなに良いブリッジでも、その反対側を支えるペグがダメなら効果が半減してしまうからね。
もちろんペグも GOTOH 製をチョイス。 しっかりと弦を固定できる 「 マグナムロック 」 だ。
フロイドローズのロック式ブリッジ + ロックナットに対抗するには、これが最適だろう。
フロイドローズは弦交換や調整が大変だが、マグナムロックはその逆で圧倒的に使いやすい。
弦をしっかり固定する目的は一緒だが、その使い勝手は真逆と言える。
マグナムロックは弦を通す穴の部分で弦をロックする。たったこれだけで弦をしっかり固定できるのだ。
軸に何周も弦を巻かなくて済むので基本的に弦はズレたり緩んだりしない。
ひと巻き以内でチューニングが完了するから便利でとても使いやすい。
そして緩みが無いだけでなく、弦の振動が直接軸に届くのが良い。
ガタ付きのない高精度の軸からヘッドへと確実に音を伝えるため、ブリッジと相乗効果で効くだろう。
シンプルゆえに得られるダイレクト感が音色に広がりや深さをもたらすはずだ。
■ ピックアップ
有名ブランド Seymour Duncan ( セイモアダンカン ) 製のハムバッカー。
ネック側には 「 SH-2n ・ ジャズモデル 」 、ブリッジ側には 「 TB-4 ・ JBモデル 」 をチョイス。
上位ブランドである EDWARDS のフォレストには SH-1n + TB-4 の組合せが使われているが、
ここはあえて SH-2n + TB-4 を選ぶ。
その理由はいくつかあるが、まず何と言ってもこれが制作者ダンカン氏のお気に入りの組合せ。
作った人が 「 これがイイ! 」 と言っているんだから、絶対ガチの至高の組合せなワケだ。
SH-1n は 「 ’59モデル 」 と呼ばれるビンテージタイプで、ハムバッカーを設計したセス・ラヴァーが
使っていたのと基本が同じ仕様。これは大変捨てがたい候補なのだが人気ある定番モデルなだけに
万人向けと言うか、実際に弾いた場合に素直すぎるイメージがある。
SH-2n は 「 ジャズモデル 」 と呼ばれているが、SH-1n の出力を若干下げて、その代わりに高域の
レスポンスを上げたモデルだ。クリアでブライトなサウンドが特長となる。
実際、キレと高域の抜けの良さは、フォレストの外観に良く似合うんじゃないかな。
それに 「 フォレストなら SH-1n + TB-4 だろう 」 のような先入観を澄まし顔で裏切る面白さだ。
ちなみにボディー材はアッシュなので ( 再塗装するために全て塗装を剥き、ほぼアッシュと確信 )、
ボディー的には澄んだ中高音と抜けの良さが特長となる。
同じベクトルを持つ SH-2n は長所をさらに伸ばす武器となるだろう。
あともう1つ大事なこと。それは市販の SH-1n の外観には Seymour Duncan のロゴが無い。(^^ゞ
これはビジュアル的に致命的。(笑)
やはり交換する以上、今回のいじる方向性から考えてもブランドロゴがしっかり見えるものがいい。
この点からも SH-2n + TB-4 がベストチョイスだと思われる。
■ その他
音響系では定番中の定番、KESTER 44 のビンテージハンダ。音を追求するならこれ。
1960年代後半以降、約 40 〜 50年も前に製造された外箱付きレアもの。
素性や得体が定かでない切り売り品でなく、ちゃんと箱まで存在していることが最も大事。
( もちろん箱の有無は価値観的な話しで、音色や音質改善とは無関係(笑) )
内部回路のハンダ付けはこれを使います。
「 ハンダで音が変わるのか? 」 と疑問も持つ人も多いことでしょう。(^^ゞ
しかし、音楽に携わる多くの人が認める 「 音の違い 」 が確かに存在。
音響マニアからは 「 こいつにしか出せない音 」 があると言われていて 「 何とも言えぬ味 」 を演出。
もちろん科学的に明確な根拠は無いけれど、製造されてから約半世紀となるこの風格と歴史の重みは
それだけで充分過ぎるほどの値うちがある。
内部回路に使う配線は、やはり定番中の定番である BELDEN 製の 8503 22AWG。
上記のハンダと同様にマニアが認める良質の音色に欠かせないアイテムだ。
一応とりあえずこの 8503 22AWG を使う予定だが、個人的にはもう少し太い配線のほうが好みなので
超高級オーディオで使われる 「 Hi-OFC ( ハイクラス無酸素銅 ) 」 のスピーカー用ケーブルなども
試してみたいと思う。
Hi-OFC ケーブルは、極限まで不純物を取り除いた超高純度銅で出来ている。
オーディオマニア必須アイテムで良質サウンドに欠かせない配線だ。
モノによっては 1メートルで数万円もする超高価な Hi-OFC ケーブルも存在するとか。
無論、超高価な配線を使えばそれに比例して音質が良くなるという科学的明確な根拠は無い。
だが、もともと楽器とは、材質にこだわるのが正しい姿だ。
上位モデルを追い抜くために武装しているのだから、これぐらいやって丁度良いと思う。
ボリューム類も全て交換。トーン用のコンデンサは、これまた定番のオレンジドロップ。( 上の写真:左 )
ジャックは通電性の良い金メッキタイプに交換。( 上の写真:右 )
ツマミ、ストラップピンやネジ類は、他の金属パーツに合わせて金色のモノにする。
とりあえず入手しやすいフェルナンデス製のものをチョイス。
Next →
記事掲載日 2009.06/29