■インプレッサの生い立ちに隠された、進化の意味
 
 まず新型との比較の前にインプレッサの生い立ちを振り返ってみよう。
 ご存じの通り、インプレッサの誕生は「WRCで勝つためのマシン」造りから始まった。
 しかし現在のWRCと違い、当時の最高峰カテゴリーは、あくまでも市販車ベースの「Gr.A(グループA)」だ。
 
 現在のWRCで、今もなおこの旧カテゴリーであるGr.Aで戦う三菱ランエボの成績を見れば、いかに新カテゴリーの
 「WRCar」が凄いかが良く判る。現役トップドライバーでもクルマの性能の差の前には無力と化すようだ。
 
 GC8系はこのGr.Aで戦うために生まれてきたマシンであるが、途中からカテゴリーの進化に合わせてWRCarが
 生まれている。形こそ似てはいるが、ボディーや各ジオメトリーに始まり、性能・特性は全くの別物だ。
 
 そしてGC8系が、いかにWRCarのテクノロジーをフィードバックして熟成させても、それには根本的に限度がある。 
 それはボディー、「器」だ。 
 全ての受け皿となるボディーのサイズ・形状は、フルモデルチェンジしない限り変えようのない「限界」なのである。 
 
 そこでWRCarの”血”を受け継いで生まれたのが新型だ。越えられない「限度」を越えるための新ボディーなのだ。 
 さらにWRCarの真のテクノロジーを完全フィードバックさせたクルマが、今回の新型STi と言えるだろう。 
 
■エンジン メカニズム・性能の比較
 
  新型STi バージョン6
可変バルブタイミング AVCS装備 −−−
バルブリフター シムレス インナーシム
コンロッド 強化・軽量(メタルも材質強化) −−−
ラジエター −−− STi専用
インタークーラー 大型化&取付け位置最適化 −−−
シリンダーブロック セミクローズド オープン
タービン STi専用 −−−
最高出力 280PS 280PS
最大トルク 38Kg-m 36Kg-m
 新型が発表されるたび、ついつい「パワーやトルク」に目が行ってしまう。
 そして数値だけを見て「280馬力かぁ〜」とか、「38Kg-mね」と言いがちである。
 
 しかし、その数値に隠された進化の違いを感じ取って欲しい。
 同じ 「 STi 」 と言うネーミングであっても、従来型と新型の違いは明らかだ。
 まして STi と Not STi の違いとなるともっと多くの項目になる。
 
■サスペンション・動力伝達系・ブレーキ系の比較 
 
   新型STi バージョン6
トレッド ワイド化 −−−
フロントサスアーム アルミ鍛造 ( ロングスパン ) アルミ
フロントタワーバー チタンパイプ カーボン
サス形式 倒立式ストラット 倒立式ストラット
リヤ・ロールセンター 上方へ移動 −−−
ブレーキ 17inchブレンボ/16inch F:4pot R:2pot 16inch F:4pot R:2pot
DCCD フリー前45:後55 ( RA16inch ) フリー前35:後65 ( RA )
フロントデフ シェアトラック ( WRX STi RA17inch ) ヘリカル ( リミテッドRA )
リヤデフ シェアトラック / 機械式 ( RA16inch ) シェアトラック / 機械式 ( RA )
ファイナル比 3.900 4.444
ミッション 6速 5速
リヤサス周り メタルブッシュで強化・剛性UP −−−
クイックレシオ・パワステ 13:1 ( RA ) 13:1 ( RA )
ABS スーパースポーツABS スポーツABS
 見た目は丸くなった印象をもつ新型だが(笑)、そんなことに騙されて本質を見失ってはいけない。
 中身はWRCar の正統な血を引くスパルタンなマシンなのだ。
 これこそ、外観のデザインよりも中身のテクノロジーで勝負してきた「スバルらしさ」を前面に出したクルマである。
 (とは言え、最近、新型WRCar画像なども出回ってきて、マジかっこいいと思うよね(^^ゞ )