■ 記事No.10006 日本選手権編6
<詳細レポート> 『壮絶 後編』
地上100m付近から、中川選手が上げ直しをはじめ、 それに、すかさず扇澤選手が合流! それを察知した川地、宮田ら十数名がサーマルに突っ込み 上げ直しに成功!!
※サーマル ....太陽の力によって暖められ発生する上昇風のこと。 この風を使ってパラグライダーは上昇します。
しかし、これからまずスタートしなければなりません。 上げなおした選手からスタートパイロン方向に向けて移動をしはじめ、 なんと、この時テイクオフ周辺に日の光が届き始めます。
※パイロン....通過地点。ラリーで言うならチェックポイント
スタートパイロンに直接向う選手、テイクオフに立ち寄る選手、 それぞれの思惑でフライトコースがわかれます。 この時テイクオフは、日が照ってきたものの、 フォローの風が強くなり、選手は出れない状態でした。
川地は集団の中でも、最も東よりのテイクオフ経由コースを選択し、 テイクオフのある山で、日が当たっているリーサイドの南斜面に突入!! ここで、今日最高のサーマル(5m/s以上)をゲット。 一気に雲底を目指します。
※リーサイド....風が当たらない側、物陰。 通常は、山の風が当たっている側に上昇気流が発生し、 反対側は、丁度鳴門の渦のような乱気流が発生します。 しかし、時として、反対側にも上昇気流が発生します
この時、最初に北に逃げた集団が、トップでスタートパイロンを撮り、 次のパイロンであるテイクオフの吹流しを撮りに戻ってきて、 私の上で旋回(センターリング)を始めました。 「よし、このサーマルは上まで続いている。」 そう確信し、センターリングに集中! 実はこの時、私とは逆の西側コースを直接スタートパイロンに向った グループは全滅していたのでした。
トップ集団はJ(アンテナ)撮って簡単に戻ってきます。 私もスタートパイロン,テイクオフを撮り、それを追いかけます。 今日の難関はJの次のIパイロン。案の定、トップ集団は、 Iを撮った後に低くなりもがき苦しんでいます。
しかも、またしても雲が張り出して、辺りは陰ってしまっています。 もはや、レース展開はもとより、トップゴールだとか総合1位など という事は考える余裕は有りません。 とにかく、『生き残る事』『ゴールに辿り着く事』 それしか頭になくなり、他人の事など気にならなくなりました。 0.2〜0.4m/sの弱いサーマルに全神経を集中し、 とにかく、飛んでいる事だけで必死です。
再び日が差し始め、コンディションが好転したのを境に、 ここぞとばかりにスピード・アップ。 再びJを撮って、テイクオフの南で上げ直し、一気にゴール!!
はっきりいって、最後のこなしは余り記憶に残っていません。 とにかく、はやくこの苦しい状況から脱したいと言う、気持ちでした。 僅か30kmを2時間30分もかけて飛んだということからも、 いかに大変だったかが分かります。 (通常、日本の大会では20kmを1時間弱で移動します。)
その後、ゴールした扇澤,西ヶ谷選手は、リフライトしたにも関わらず、 好転したコンディションで、アッという間にパイロンをクリアーして、 ゴールしたのでした。
<つづく>
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